本記事では、ワンキャリアの最高戦略責任者でもあり、オープンワーク株式会社の戦略ディレクターを務める北野唯我氏の著書である「転職の思考法」の要約をしています。
目次
著者のプロフィール
北野唯我
北野唯我氏のブログより引用
兵庫県出身。新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局で中期経営計画の策定、MA、組織改編、子会社の統廃合業務を担当し、米国留学。帰国後、ボストンコンサルティンググループに転職し、2016年ワンキャリアに参画、最高戦略責任者 経営企画執行役員。2019年1月から子会社の代表取締役、オープンワークの戦略ディレクターも兼務。30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が15万部、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)が10万部。最新作に同時発売の『分断を生むエジソン』(講談社)、『オープネス ー職場の空気が結果を決めるー』(ダイヤモンド社)がある。1987年生。
元々は広告代理店、コンサルティングファームという経歴を歩んでこられていますが、ハイクラス向けの新卒就活サイトワンキャリアに参画し、最高戦略責任者経営企画執行役員を務められています。
筆者自身も、著者である北野氏が執筆していたワンキャリアの記事や、はてなブログの記事をよく読んでいました。
特に、下記の記事は非常に興味深く、転職の思考法の中でも一部書かれていました。
日本の生産性が低いの産業に適切な人員配置が行われていないから、という「アロケーション仮説」に関する記事です。
日本の強みは「単位面積あたりのGDP」にあることに言及し、東京一極集中は、実は日本が生き残るために必要なこと、という持論を展開しています。
本書の想定される読み手
「転職の思考法」が想定している読者は、転職マーケットにいる全ての人たちです。なので、自営業をしていて、転職はしない。起業をして、会社を経営している、という人たちは該当しません。
年齢や年代などの明確記述はありませんが、特に20代や30代前半の若手層にとって非常に有益な情報となるので、特に下記の人たちにはおすすめです。
- 新卒の就活を控えている大学生・大学院生
- 社会人1〜3年目の方
- 社会人4年目〜10年目で、マネジメント経験や専門領域である程度実績を積まれた方
なお、本書は30歳になって、キャリアについて真剣に考える青野という青年を主人公として小説仕立てで進んでいきます。
本書の目次・構成
- プロローグ このままでいいわけがない。だけど……「漠然とした不安」の正体
- 第1章 仕事の「寿命」尽きる前に、伸びる市場に身を晒せ「一生食える」を確保する4つのステップ
- 第2章 「転職は悪」は、努力を放棄した者の言い訳にすぎない「組織の論理」が人の心を殺すとき
- 第3章 あなたがいなくなっても、確実に会社は回る 残される社員、ついてくるパートナーとどう向き合うか
- 第4章 仕事はいつから「楽しくないもの」になったのだろうか?心から納得のいく仕事を見つけるために必要なこと
このままでいいわけがない。だけど……「漠然とした不安」の正体
「元エリートサラリーマン」の末路
転職に必要なのは、情報ではなく「思考法」である
第1章 仕事の「寿命」尽きる前に、伸びる市場に身を晒せ「一生食える」を確保する4つのステップ
STEP1 自分の「マーケットバリュー」を測る
- 上司を見て働くか、マーケットを見て働くか
- マーケットバリュー①技術的資産
- マーケットバリュー②人的資産
- マーケットバリュー③業界の生産性
STEP2 今の仕事の「寿命」を知る
- 仕事がなくなるサイクル
- 「伸びている業界で働いたことがある」だけでバリューは高まる
STEP3 強みが死ぬ前に、伸びる市場にピボットする
- 「他人が作った船」に、自分の人生を預けるな
- 成熟したマーケットにあと乗りしても、確実にコモディティになる
- 伸びるマーケットを見つける二つの方法
- 才能は不平等だが、ポジショニングは平等だ
STEP4 伸びる市場の中から、ベストな会社を見極める
- 「働きやすさ」と「マーケットバリュー」、どちらをとるか?
- いいベンチャーを見極める三つのポイント
- 転職エージェントには、面接後「どこが評価されなかったか」を聞け
- 財務諸表だけで、企業の価値を見極めることはできない
- 「中途で入るべき会社」と「新卒で入るべき会社」の違い
第2章 「転職は悪」は、努力を放棄した者の言い訳にすぎない「組織の論理」が人の心を殺すとき
- 選択肢がないと、人は「小さな嘘」をつく
- 「会社にとって本当に正しいこと」は何か
- 会社を「居場所」と決めた瞬間、手段の目的化が起こる
第3章 あなたがいなくなっても、確実に会社は回る 残される社員、ついてくるパートナーとどう向き合うか
- 転職後期に生まれる「今の会社に残ってもいいかも」という迷い
- 一緒に働いてきた仲間だからこその後押し
- パートナーへの相談は「共感」が命
第4章 仕事はいつから「楽しくないもの」になったのだろうか?心から納得のいく仕事を見つけるために必要なこと
- 生きる「手段」としての仕事、「目的」としての仕事
- 楽しくない仕事をする人間は結局、金に買われている
- ほとんど人に、「やりたいこと」なんて必要ない
- 仕事の楽しさは「緊張と緩和のバランス」が決める
- 自分に「ラベル」を貼り、コモディティから脱出せよ
印象に残った言葉
転職は「初めての意思決定」しかも自分の意思で何かを手放す意思決定
いいか、転職というのは多くの人にとって「初めての意思決定」だからだ。だから、怖いんだ
多くの人が、転職に恐怖を感じるのは、何かを手にするからではない。人生で初めて何かを手放すことになるからだ。しかも自分の意思で
転職とは仕事を変えてキャリアアップする、などの面が強調されることが多いですが、同時に今持っている何かを手放すことでもあります。
例えば、新しい職種へのチャレンジは、現在の職種の経験や専門知識を全て使えるわけではありません。大手企業からベンチャー企業への転職では、充実した福利厚生が無くなったりします。
マーケットバリューの測り方
マーケットバリューは箱の大きさで表現できる
本書では、転職者が高めるべきマーケットバリューの測り方として、次の3点を高めるべきと主張しています。
- 技術資産
- 人的資産
- 業界の生産性(一人あたり)
技術資産とは、その名のとおり、価値のある技術をどれくらい持っているか?専門性と経験でできている。20代は専門性を、30代では経験をとることが重要。
人的資産とは、その人だからこそ動いてくれる社内の人や、指名で仕事をくれる人間。人的資産は、年をとるにつれ重要度が増していく。40代は人脈が重要。
業界の生産性とは、その業界にいる人間が、平均一人当たりどれほどの価値を生み出しているか。言い換えると一人当たりの粗利に該当する。給与の期待値は、業界の生産性に最も大きく影響を受ける。
産業別のGDPは最大で20倍違う。
君のような人間、技術資産も人的資産もない人が会社を選ぶ際は実質二択だ。ひとつは①生産性がすでに高い産業。もうひとつは②エスカレーターが上を向いている産業だ。反対に絶対にダメな選択肢は、生産性が低くて、かつ、成長が見込めない産業で働くことだ
仕事のライフサイクルを知って「生産性の高さ」「成長産業か」を予測
- ニッチ →イスの数少ない×代替可能性が低い
- スター →イスの数多い ×代替可能性が低い
- ルーティンワーク →イスの数多い ×代替可能性が高い
- 消滅 →イスの数少ない×代替可能性が高い
自分の仕事が1ならエスカレーターは上向きであり、成長産業にあると言えます。しかし3の状態なら成長産業ではなく、衰退局面に入っていると言えるでしょう。
そして、衰退産業での経験は、やがて無効化してしまいます。それに対して、成長産業での経験は、それ自体に価値があります。
今でいうと、ブロックチェーン業界や、AI、自動運転などでしょうか。
ひと昔前で言うと、スマホ業界やアプリ業界が当てはまります。
才能は不平等だが、ポジショニングは平等
100万人が参加しているゲームで一番を目指すのではなく、いずれ100万人が参加するゲームに一番乗りすること
要は、自分自身のキャリアという時間的資産をどこに投資するかという選択自体は平等にできる、ということです。
会社選びの三つの基準
- マーケットバリュー
- 働きやすさ
- 活躍の可能性
いいエージェントの五箇条
- どこがよかったか、入社するうえでの懸念点はどこかをフィードバックしてくれる
- 案件ベースでの「いい、悪い」ではなく、自分のキャリアにとってどういう価値があるかという視点でアドバイスをくれる
- 企業に、回答期限の延長や年収の交渉をしてくれる
- 「他にいい求人案件は、ないですか?」という質問に粘り強く付き合ってくれる
- 社長や役員、人事責任者などとの強いパイプがあり、彼らとの面接を自由にセットできる
多くのネットのサイトや、記事では、オススメのエージェントを紹介してくれますが、いいエージェントの見分け方はあまり紹介されていないので、理解しておくと有用です。
大手の転職エージェントは、担当者の質が大きく異なるので、個人の力量を見極められるようにしておくと良いでしょう。
ネットの口コミは、参考にしてもいいが必ず他社と比較すること
転職エージェントで紹介される案件だけで、転職先を絞ってはいけない。なぜなら、そこには本当に魅力的な求人が乗っていないことがあるからだ。もしも、自分が働きたい会社が明確であれば、様々な手段で仕事を探せ。SNSサービスや、直接応募、自分で求人を検索するという行為を絶対に忘れてはいけない。
ほとんどの人に、「やりたいこと」なんて必要ない
本書では、人間には、1何をするのか、で物事を考える人間と、2どんな人でありたいか、どんな状態でありたいかを重視する人間の2種類いると主張しています。
そして、多くの人は何をするのかという1パターンよりも、どんな状態でありたいかの2パターンが該当する。
つまり、人は必ず好きなことを見つけなければいけない、ということはなく、ある程度好きなことをやりながら、自分と環境の状態を重視していく仕事の生き方です。
転職の思考法の評判・口コミ
まとめ
いかがでしたでしょうか。以上、転職の思考法の要約・紹介記事でした。
日本はまだまだ転職が当たり前になったとは言い難いですが、少なくとも今の若手の方や就活中の学生の方は、転職をひとつの合理的な選択肢として企業を決めるようになってきています。
その際は、目の前の短期的な福利厚生や、給与などだけではなく、本書にあるような「マーケットバリュー」をあげて、転職しようと思えばいつでも転職することができる状態を作ることが理想です。